幼稚園年中の娘がいます。
生まれてこの方、ずっと1人っ子で、少し泣けば周りの大人が手を貸してくれるのが当たり前。
幼稚園に行き始めて、だいぶマシになったものの、甘えん坊で、朝の用意もまだまだ時間がかかります。子離れできない親ではいけない、と、多少突き放す努力をしたものの、登園の時間に間に合わさなければ、と思うあまり、ついつい声をかけて手伝ってしまう私に、娘はやはり甘えたままです。
幼稚園では大丈夫なのだろうかと、ずっと心配していました。
そんなこともあり、「甘えすぎです」と言われることを覚悟して臨んだ家庭訪問。
ところが先生は、「とってもしっかりしていますよ。周りの子にも気配りをしてくれて、助かっています」と、笑顔で話してくださいました。
聞けば、幼稚園では誰に言われるでもなく片付けを積極的に行い、お腹が痛いと泣いている子を職員室に連れて行き、先生のお話を聞く時は背筋をピンと伸ばして椅子に座っているのだそうです。
うちでは、困ったら泣き、かまって欲しければ泣き、自分の意に沿わないことがあれば泣き、と、泣いてばかりの娘。片付けだって、やはり途中で泣き出して、私に手伝いを求めてくるのがお決まりのパターンです。
そんな娘からは、しっかりした姿をとても想像がつかず、「それは本当にうちの子のことですか?」と思わず問い返してしまうほど驚きました。本当だと言われると、感動で泣きそうになってしまいました。
泣いてばかりだと思っていた娘は、家の中だけのことで、外に出ると娘なりに頑張っていたのです。
幼稚園で頑張って、お利口にしていることも知らず、褒めるどころか「もっとしっかりしなさい」とまで言っていた私。
「幼稚園でこんなことしてたら、お友達に笑われるよ!」と言った私の言葉を真に受けていたのでしょうか。
申し訳ないことをしたな、と思いつつ、甘えん坊の娘がしっかりと幼稚園生活を送っていることを知り、驚くと共にとても誇らしく思いました。
その晩、娘とお風呂に入りながら「先生、とっても褒めてらっしゃったね。頑張ってるんだね」と娘に言うと、娘は「頑張ってるよ!だってね、もう年中さんだもん!」と、胸を張って、そう返しました。
「そんなこと知らずに、頑張りなさいって言ってばかりでごめんね」と謝ると、幼稚園で習ったのでしょう「いいよ!」と元気な返事が返ってきました。
今思えば、娘を甘えん坊にしていたのは、私自身だったのかもしれません。
朝の用意をしている時も、手を離すどころか、常にぴったり横にいて、心配するあまり、あれやこれやと口出ししていた自分が恥ずかしくなりました。そんなことしなくても、もうきちんと出来る子なのに、そのことに気付かず、何もできない赤ちゃんのように扱っていたのです。
次の日、朝の用意を、娘のしたいようにさせてみました。
手伝いたいのをグッと堪えて、黙って見ていると、私が傍にいないことに戸惑いながらも、娘は登園の時間までにきちんと全てをこなしました。
部屋の片付けの際、途中で手伝いを求められても「できるはずだよ。待ってるから、自分でやってごらん」と話すと、少しメソメソと泣きましたが、私が手を貸さないつもりだと理解すると、自分の力で成し遂げようと動き始めました。
なぜ、この子はいつまで経っても赤ちゃんのように甘えん坊なのだろう、と頭を悩ませていましたが、誰よりも娘を赤ちゃん扱いしていたのは、私自身でした。
娘は昨日、夏休みを迎えました。
私は、娘と話し合い、娘に2つ、夏休み中に行う仕事を与えました。
朝起きたら、洗面所のタオルを取り替えることと、玄関に置いてある植木鉢の植物に水をやることです。
今朝、娘は起きてきたら、自らタオルを替えに洗面所に向かいました。任されたことを成そうという責任感が、娘の後ろ姿から見て取れました。
黙って見守る、何かを任せてみる。
以前の私にはとても出来なかったことです。